日本では精神障害で1年以上の長期入院を続けている患者が20万人にものぼります。 これは他の先進国と比べて突出して多く、なかには、必要がない人まで入院を強いられているという指摘があります。 障害があっても地域で暮らしたいと願う人たちの声を聞きました。 ここは精神科病院の病棟。 日本では、およそ30万人が、統合失調症やうつ病などの精神障害で入院しています。 そのうちおよそ20万人が1年以上の長期入院です。 社会の偏見や差別を背景に、国は、精神障害者を病院へ収容し地域生活から隔離する政策を半世紀以上も続けてきました。 その結果、入院治療の必要がない「社会的入院」と呼ばれる人々が大勢生み出されたのです。 島田さんのような社会的入院を減らすため、国は10年前から地域生活を進める方針へと転換しました。 しかし、経営上の問題から患者を手放さない病院もあり、状況は変わっていません。 そこで、新たに考えられたのが「病棟転換型居住系施設」です。 本来、地域移行政策では、病院を退院して地域で暮らすことを目指しています。 これに対し、今回、国がまとめた方針では、精神科病院の病棟をグループホームなどの居住施設に作り変えます。 そこに患者を住まわせることで「退院」とみなし、社会的入院の数を減らそうというのです。 <「病棟転換型居住系施設」について考える会・ことし10月> 果たしてそれが退院と言えるのか? 国の提案に、当事者や家族・支援団体などから反対の声が上がっています。 【NPO大阪精神医療人権センター・山本深雪さん】 「いま私たちが言わないといけないのは、『院内に退院するのは嫌です』、その声は言わないといけないと思っています。あなた方がしたい人生、歩みたい人生を送っていっていいんですよというスタンスに立たないと、入院している方の口から自分の意欲・希望が本当の意味で口にできるわけがない」 【島田さん】 「退院すると自由があります。でも入院してると自由がないです。住むところとか死ぬところとかぐらい自由にさせてもらっておかしくないじゃないですか。そう思いませんか、皆さん?やっぱり住むところぐらいは僕たちの権利のあるところで」 日本の精神科病院はほとんどが民間経営のため、入院患者の数が減ることは死活問題です。 しかし、患者が地域の暮らしに戻れるように、退院を進めてきた病院もあります。 そうした病院も、「病棟を居住施設に転換する」という国の方針に疑問を投げかけています。 【光愛病院・有本進院長】 「(退院促進は)一緒に食事に出かけたり外出したり、家族への理解を促したり、本当に地道な作業。その人が退院後どんな生活がしていけるか、どんな希望を持って地域で生活できるかを思い描けるような支援が、いまの精神科病院に長期入院されてる方々には必要な支援だと考えています」 【下村さん】 「この陽だまりの会に25年いて、その中でいろんな人とも出会えたし、地域の中でみんなと話をして、その人が元気になっていくこととかは僕も嬉しくなるし、その人も元気になってきたなっていうのも分かるし、そういうのがすごく自分にとっては支えになってるかな」 精神障害があっても、地域で暮らしながら希望を見つけたいと願う人たち。 自由に生きる権利をどう保障するのか、国の政策が問われています。
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